数年間に渡り、「相撲トトカルチョ」の研究にのめり込んでいた時期があった。
2年前に止めるまで、力士の各種データを集め、あらゆる角度から詳細な検討をしていた。
ちょうど若貴全盛期の頃である。

あの頃の貴乃花は強かった。
あきらかに相撲の「質」が、他の力士と違っていた。

プライベートでも、宮沢りえと交際するなど公私とも絶頂にあった。
マスコミへの対応も、今よりずっと良かった時代である。
それがおかしくなり始めたのは、彼女との交際が破局してからだと記憶している。
周囲から猛烈な反対にあった、と報道された。

自分の意思が尊重されない世界に足を踏み込んでしまっていると悟った彼は、残りの人生を相撲に専念しようと決心したのだろうか?
家庭に気を使わないよう、年上のアナウンサーと結婚をしたのだろうか?

マスコミに対して口を閉ざすようになり、心の悩みを整体師に打ち明けるようになった。
兄を、公の機関で非難したりもした。
マインドコントロールされていると、ワイドショーのネタにもなった。

一昨日の引退会見の表情を見ていると、ホッとしたというよりまだマインドコントロールから抜けていない、生気の無い無表情な顔つきに見えた。
テレビカメラを見すえるその視線の先は、遠くを見つめているようだった。
平成の大横綱は、15年間にわたる一人ぼっちの闘いで、心の奥底を吐露するすべを忘れてしまったのだろうか?

協会のため、ファンのため、自分に厳しくそして自分を殺してきた。
そんな「可哀相な一人の男」に見えてしまった事に、私は少し哀しくなった。
しかしこれは引退会見なのだ。
彼の今までの偉業に対して、畏敬の念を持って賞賛するべきなのかも知れない。

昔から力士の間で星のやり取りがあると言われ、つねに八百長疑惑を掛けられてきた相撲界。
ガチンコ(真剣勝負)だけで横綱を張ってきた日本人力士は、花田兄弟だけだと今でも私は思っている。

実力の無かった兄は短命に終わった。
だからこそ、弟の残した実績にはただただ頭が下がる思いなのだ。

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